データセンタ
0.改訂履歴
- 2002.10.10 新規作成
1.はじめに
このドキュメントでは,データセンタについて思う事を記述する.
2.データセンタ
- データセンタとは,コンピュータを設置している専用の建物やフロアの事を示している.
- その多くは,24時間のサービスや災害に耐えられるよう,耐震設計が行われた建物や,土地も岩盤の上に立っているとか活断層から数十キロの距離がある等の場所に立地し,予備電源や発電施等を備えている.
- 米国では,倒産したエクソダスコミュニケーションズや,破綻したワールドコム等が巨大なデータセンタ施設を持っている(いた?)が,日本ではメーカ系や金融系が自社のサービスの為に備えたコンピュータセンタという位置づけで数多く存在している.
- それら自前のコンピュータセンタ施設を持たない,あるいは会社のリストラクチャリングの一環としての設備投資や維持削減の為のアウトソーシングの移管先として用意されているのが,データセンタと呼ばれている施設とサービスと言っても過言ではない.
- インターネット系のサービスに特化したデータセンタの事を,「iDC(インターネットデータセンタ)」等と呼んだりする.
3.設備の生い立ちとサービス
- データセンタは,大きく2つの生い立ちがある.
- 新規設備を使うパターン
- 全く新しい建物を建築し,ビル全てがデータセンタになっている場合も少なくない.
- コンピュータのみを置く場所として特化した設計になっており,床の底上げはもちろん,窓のない外観や入出管理などのシステムが非接触型カードや指紋認証になっていたり,監視カメラ等を備え,数多くの業者が出入りする事を考慮した設計になっている.
- 契約形態によっては,フロア内に「壁」を設置して他社にそこでサービスをしている事を秘密にする事が出来たり,搬入や保守部品の専用倉庫,会議室や休憩所,カップラーメンの自動販売機や仮眠室まで備えるところもある.
- 既存の設備を使う形態を取っていても,実は物流業社や倉庫業社が余っている建物を転用してデータセンタに仕上げた物や,倒産した銀行が持っていた建物を買い取り,データセンタに改造したものもある.
- 既存の設備を使う
- メーカ系が行っているデータセンタビジネスに多く見られる形態である.
- それまで銀行や大企業に専用に提供していたコンピュータセンタを再利用している.
- 背景として銀行や大企業の再編や倒産,コンピュータの小型化などで,それまで利用していた施設が不要になった事で,それを有効活用しようと言う考えで作られた物.
- おもうに,その多くは第2次〜第3次銀行オンラインの頃に作られた物が多いようで,築15年程度なので建物は劣化している.
- しかし,メインフレームを設置する目的で建設されているので,予備電源などの設備は充実している.
- またそれだけその設備を使った運用実績があるというところが,新興のデータセンタより安心できる所である.
- ただし,一般的に土地が安く,常駐員が車通勤しやすい面などの理由で田舎にある.
- 新規設備を使うパターン
- データセンタが提供するサービスはピンからキリまである.
- 最低限のサービスは,設置場所を確保し電源供給を行っていだけである.
- 基本サービスに,ノード(生き死に)監視や定時刻の見回りなどが入っている場合もあるし,別料金の場合もある.
- 定時刻の見回りとは,コンピュータ前面は背面にあるLEDのランプの色を確認する作業である.
- 一般的に,安定稼働中だと緑,異常発生時にオレンジのランプが光っている.
- メインフレームの時代には,メーカが統一されているため,どの場所が故障しているなどを集中管理する事が出来ていた.
- しかし,オープンシステム系サーバではメーカそれぞれがサーバ部品の監視ソフトを提供していたりするので,結局は色々なしがらみで統合監視の仕組みが使えない.
- よって,一番確実なのは,ランプを見て回る事である.
- 多くは,データセンタ常駐員は,3交代なので8時間毎の黙視チェックが期待できる.
- ネットワークトラフィック
- これも普通はオプションとして別料金で提供されるサービスである.
- ただし,普通,データセンタ側で全体のざっくりとしたトラフィックは監視している.
- それは,「回線の増強いかがですか?」と販売する目的があるためで,よって頻繁でなければ担当営業などに言えば,グラフを提供してくれる事もある.
- その他のサービス
- データセンタのパンフレットには,だいたい次の様な事が書かれている.
- 設備の話
- 24時間監視体制
- MCSE,OracleMaster等のエンジニアの配備.
- ただし,それらはAND条件ではないため,24時間MCSEが居るわけではない事が多い.
- 24時間体制を敷いていても,高いスキルを持ったエンジニアがそのデータセンタに居る時間帯は日中である.
- 深夜時間帯は,やはり単純作業系が多くなるので,単純労働社系か入社1年目などの修行中のエンジニアしか居ない事が多い.
- また,たとえばデータベースにSybaseを使っていると途端に「面倒見る事が出来ない」などと泣きをいれてくるか,発注しづらい値段で見積を持ってくるイヤなデータセンタサービス業者もある.
- データセンタのパンフレットには,だいたい次の様な事が書かれている.
4.入出管理
- ここでは,いままでに利用した事のあるコンピュータセンタ,データセンタの入出管理について話をしてみる.
- A社(金融系)
- 入館は前日までに上司をとおして申請.
- 申請が通るまで2〜3個印鑑が必要.
- まず,自分のIDカードで建物にはいる.
- 建物に入ったら,警備室で入館手続きを取る.
- ガードマンがあらかじめ申請が出ているかコンピュータで確認後,2つの鍵(カード)をもらう.
- 1つ目の鍵で警備室とエレベータの間にあるガラス張りの自動ドアを通る.
- エレベータが空くが,自分が申請したフロアにしか停止しない.
- フロアに付くと,再度鍵(非接触型)を付ける.
- カプセル状の扉で,手前側が空く.
- カプセルにはいる.
- 後ろが閉まる.
- 前が空く.
- つまり,一人しか通れない.
- さらに,そのカプセルの中で体重計測を行っているので,データカートリッジ(当時は大きく重かった)などを持ち出せない.
- その会社,データセンタじゃなくても入り口にガードマンが二人居て,カードを見せてからカードリーダに通して入館するという感じでした.
- B社(製造業ユーザ企業自社コンピュータセンタ)
- 自動ドア.
- C社(メーカ系SI子会社)
- 入館は前日までに申請. 当日でも可能.
- 建物の入り口でガードマンに名前を言うと身分証明書を見せなくても外来のバッチを貰える.
- 建物内のデータセンタのフロアにいき,インタフォンを押すと誰かがでてきて受け付け.
- 身分証明書を見せなくてもカードを貰える.
- 用意された紙に会社名と名前と入館日を記入するが,一覧表なのでどこの会社が出入りしているか判る.
- 1つ目の扉を非接触のカードで開いて中にはいる.
- 10人乗りくらいのエレベータくらいのサイズの空間に入る.よって1つのカードで何人でも入れる.
- 向かいにあるもう1つの扉は,後ろの扉が閉まってから同じようにカードで入館する.
- 出る時は同じ手順でフロアをでて,カードを返しバッチを返す.
- D社(SI企業で最近データセンタ事業を始めた)
- 申請は一応メールで入りたいと言う事になっているが,申請書類はなく無くても入れる.
- 未申請でも,直接受付に言ってインタフォンを押して名乗ると身分証明を見せなくても入れる.
- 入る時だけ,D社の社員が一緒に入る.
- D社社員が非接触カードで1つめのフロアの扉を開け,2つ目の扉は指紋認証.
- 入ったらやっと入館申請のログを書くが,ここは何故か表と票の2枚記入する.
- 表をみると,どこの会社が出入りしているか判る.
- 1つ目のフロアと2つ目のフロアの間にトイレがあるので,トイレに行く時には2つ目の指紋認証じゃないと開かない扉に物を挟んで閉まらないようにしていく.
- フロアを出る時は勝手に出られるので,そのまま帰る.
- 表と票の紙に退室時間を記入する事になっているが,忘れる.
- E社(空いている建物を使って最近データセンタ事業を始めた)
- 前日までに入館申請を行う.
- 申請後,合い言葉が送られてくる.
- データセンタ到着後,インタフォンを押し,名乗って合い言葉を言うと受付に入れる.
- 入館受付後,身分証明(社員証・免許証)と引き替え後,非接触型カードをもらう.
- フロアに入る時に,カードを使う.
- フロアを出る時に,カードを使う.
- 退室時は,受付でカードと引き替えに身分証明を返却してもらう.
- A社(金融系)
- 簡単に総論をまとめると,
- A社はさすがに金融系だけに厳しい. というか厳しすぎるので柔軟な対応が出来なさそう.
- B社は論外.
- C社とD社は,その業種から色々考えているが,経験がないためか,複数の会社が利用する事を前提にシステムが考えられていない.
- E社は,元々コンピュータ会社ではないが,複数の会社が出入りする場所を提供していた関係で,一通り矛盾なく網羅している.
- 可能ならば,E社レベルのデータセンタを選びたい.
5.データセンタを利用する場合の価格
- データセンタにサーバを設置する場合,セキュリティ面から,多くは1ラック単位で契約する事になる.
- インターネット系のサービスを行うサーバマシンを設置する場合だと,速度面などを考えると結局は大手町に近い立地条件を選択するユーザが多い.
- それを裏付けるデータとして,多くのデータセンタは「大手町から5km圏内」などという表記をしている事がある.
- 首都圏では,1ラックが30万〜50万前後のようである.
- 東京23区を離れ,大手町から30km圏内程度になると,1ラック20〜30万程度.
- 都内から2時間圏内などになると1ラック8万円などという事になる場合が多い.
- ただし,単純にラックの設置価格だけで計算できないところがあるので難しい.
- 前出のエンジニアの質.
- ネットワーク機器など,高価なハードウェアをサービスで提供(有償)してくれるところもある.
- こういうのはレンタルとかリースとか資産にもならないので,諸経費としては手続きが楽.
- 経験として,やはり会社から近い場所にあった方がよい.
- 結局は,データセンタでは,ハードやOSレベルでの面倒を見る事は出来るが,その上で動いている業務とか,その業務の依存関係などを理解しているわけではないので,障害が発生した時に,どっちにしても駆けつけなければならない.